虚空に吠えろ!負け犬の遠吠え!!

同人サークル07th expansionを応援するブログ。 07th expansion周辺のニュース。 ゲーム『ひぐらしのなく頃に』『うみねこのなく頃に』に関する考察。 NScripterのオリジナルスクリプトなど。

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ヴェロキア竜騎兵外伝 ~竜騎兵を作った男たち~  (2)

 観念したオルデーゼがしぶしぶとステージに戻る。
オルデーゼがステージにあがると一斉に歓声があがった。

「く…屈辱だ……」
「みんな大佐の新型対弾甲冑試乗に期待をしているのですよ。…たぶん」
「ほ、本当か? 私には、私の格好に卑猥な視線を浴びているようにしか思えんのだが」
「ややや、気のせいです。ええ、本当に。
 ささ、対弾甲冑の上部に蓋が在りますゆえ、そちらからどうぞ。
 入り口が狭くなっておりますので、お気をつけてお入りください。
 あ、ガウンは脱いでくださいね」

 ステージの異様な雰囲気は気になるが、新型対弾甲冑はかねてから彼女が心待ちにしていたものである。
好奇心には勝てず、オルデーゼはガウンを脱ぐと、ガラスの鎧の前に立つ。
 近くでよくよく見ると、『鎧』と言うよりも『鎧型の水槽』と言ったほうがしっくりくるだろうか。
可動部には防水された布が張ってあり、一応は動くようだ。
 踏み台に乗り上からのぞくと、確かに上部を取り外し、中に入れるようになっていた。

 オルデーゼは中の液体を一すくいし、手にとってみる。

「なるほど…、これが……。
 思ったよりドロドロとしていますね……。
 ドロドロと言うか…、ヌルヌルと言うか……」
「や、そればっかりは仕方ありませんね。
 それがこの液体の特性ですので。
 逆に言えば、そのドロドロが強くなればなるほど、防御力は上がるわけです。 
「そうですか、ふむ……」
「大佐、どうぞお入りください。
 人体への影響は無いはずです」
「う……、そうか。
 では、入るぞ………」

 一瞬の躊躇の後、オルデーゼはその液体に身を浸していった。
ヌルヌルとした感触に思わず声が出る。

「ぬ…ぬるぬるしているな……。
 うっ…、あっ…、はぁん………」

 その瞬間!! 会場から大歓声が上がる!!

「おおお!! 姫様がぁ! 姫様がぁ!」
「すげえ! 俺の視界の肌色ゲージがフルマックスに!!」
「俺……、今日は帰ったら母ちゃんに赤飯炊いてもらうんだ…!」
「音響班! 今のお声…いや、データはしっかり取ったんだろうな!
 ダビングしてください!!」
「一句できた!!
 『姫様が はぁんと言ったから 今日と言う日は ドラグーン記念日』!」
「感動のあまり枯れかけていた花が再び開いた!!」

 会場はステージ上のオルデーゼへの期待で爆発しそうだ!!
オーディエンスの熱狂は怖いぐらいに高まっている!!

「バ……バカモーン!!
 み、見るな! 見るんじゃなーい!!」

 兵士たちの興奮の様に羞恥を覚えたオルデーゼは、自らの立場も忘れて叫ぶ。
しかし、オルデーゼの叫びは余計に会場の者たちの扇情を煽る効果しかなかった。

「おお……。ツンデレ様じゃあ!! 
 ロリ姫ツンデレ様のご光臨じゃあ!!」
「言葉による辱め・・・イイ!!」


「拝むな! 感じるな! バ…バカァ!!
 マッコーイ! なんとかしろぉ!!」
「は…はいぃぃぃ!!」

 慌てたマッコイが、すばやくステージの緞帳を下ろした。



(((ひーめさまっ!! ひーめっさま!!)))



 緞帳の外では『姫様コール』が巻き上がっていた。
しかし、それも緞帳がもはや開かぬとわかると、徐々に小さくなり、そして群集は解散していった……。

「ややや、大変失礼をばいたしました。
 あいつらもしかたない奴らですなー。
 私も後でしっかりと言い聞かせますのでご勘弁ください」
「………マッコイ。主任の持っているカメラを取り上げなさい」
「あっ! こ、これは重要な技術資料でして……」
「問答無用です! 検閲します!!
 あとで司令部まで取りにきなさい!」

 

  
 ようやく落ち着きを取り戻したオルデーゼ達は開発主任からの説明を受ける。

「……先ほども述べましたが、この液体は衝撃を吸収する特性があります。
 論より証拠。実際に見ていただきましょう。
 こちらにその鎧と同じ材質、同じ厚さのガラスを用意いたしました」

 ステージ脇から助手がガラスを運んできた。
 何の変哲もない、そこら辺の窓ガラスを持ってきたようにも見える。
 開発主任が鉄パイプを携えてガラスの前に立った。

「このガラスは強度に関しては特別な加工を施していません。
 まあ、加工しやすいようにいくらか成分調整されているようですが。
 それらが、強度に強く影響を及ぼしていないことをお話しておきます」

 開発主任は研究者らしく、前提を述べていく。
鎧の液体に浸かりっぱなしのオルデーゼは次第に焦れてきた。

「主任。論より証拠はどうしました。
 まず結論から見せていただきたい」
「ややや、これはこれは失礼をば。
 どうも語り始めると長くなっていけない。
 では、まず見ていただきましょう」

 そう話す主任は、おもむろに手にした鉄パイプでガラスを横殴りに叩いた。

「あ、あれ…?」

 ガラスは…、そのままで残っていた。
 鉄パイプが当たったところから幾分ヒビが入っていたが、ガラスは未だ健在だった。 
 主任が恥ずかしそうに頭をかく。

「ややや、これはこれはいけませんなぁ
 これだから理系は力がなくて困る。
 マッコイ殿、代わりにちと、このガラスを叩いてもらえますか」

 と、鉄パイプを渡されたマッコイがガラスを殴ると、ガラスは簡単に砕けてバラバラになった。

「ええ、本来はこの通り。人の力でちと殴った程度であっさり割れてしまいます。
 さて、それではマッコイ殿、今度は大佐の鎧の方を殴ってください」

 マッコイは、主任が指差すオルデーゼを見て目を丸くした。

「え? 私が大佐を? 
 な…、殴るんですかぁ?」
「ええ、そうでなければ試験にならないでしょう」
「いや…、私が姫様を殴るなんて……、そんな不敬な……」
「困りますよ。私では先ほどみたいにガラスを割るだけの力はありませんからねぇ。
 マッコイ殿にやってもらわないと」
「そ…そんな………。う~ん………」

 例え鎧越しとは言え、オルデーゼを殴ることによほどの抵抗を覚えるのだろう。
マッコイは渋い顔を作り冷や汗を流す。

「マッコイ。何を躊躇することがあるのです。
 これは対弾甲冑のテストです。不敬などと気を使う必要はありません。
 さっさと始めなさい。
 私に……、いつまでこんな格好をさせておくのですか…」

 語尾に一抹の本音と羞恥をのぞかせながらオルデーゼがマッコイを催促する。
渋っていたマッコイも、自分が鉄パイプを振るわないと話が進まないからと決心したようだ。

「それでは……、姫様。失礼します!」

 ガラスと鉄パイプの衝突する甲高い音が響き渡った。
その結果………、ガラスの鎧は無傷!

「マッコイ。何をしているのです。
 手加減は無用。本気でやりなさい!」
「へ? いや、結構本気で殴ったんですが……。
 そ、それじゃ、もう一回行きます!」

 先ほどよりも大きな音が耳を通り抜けていく。
あまりの音に開発主任が眉間に皺を寄せた。

「なるほど…、本当に本気で殴っているようですね。
 これはすばらしい! これだけの衝撃にも関わらず、中の液体に軽い波を起こす程度にしか伝達していない。
なるほど、これなら歩兵銃程度なら本当に防げるでしょう。
 マッコイ! これは面白い。そのまま続けなさい!」

 オルデーゼが甲冑の性能に感嘆の声を上げる。
開発主任は満足そうに頷いていた。

「い、いいんですかぁ?
 それじゃ! 遠慮なく行きますよぉ!!」

 ステージ上に何度も甲高い音が響き渡る。
その度に甲冑内の液体は鉄パイプを受け止め、表面のガラスからの衝撃を吸収していた。
「ははははは! な、なるほど!
 これは面白い!! そりゃそりゃそりゃそりゃあー!」

 鎧とオルデーゼへの影響がないとわかったマッコイは鉄パイプを夢中で振り続ける。
オルデーゼはそんなマッコイをあきれた顔で眺めていた。
おもむろに口を開き、冷たい一言をマッコイに浴びせる。

「マッコイ……。調子に乗るなよ。
 そんなに私を殴るのは楽しいか?」

 マッコイの動きがピタリと止まり、一瞬にして顔色は青ざめた。

「え…、遠慮するなって……。言ってませんね……はい」



 その半時後、軽くシャワーを浴び、再び軍服姿に着替えたオルデーゼと開発主任が会話をしていた。

「ふむ、今日は面白いものを見せてもらいました。
 素晴らしい耐衝撃性です。これならば鉄壁の装甲兵が出来上がるでしょう。
 後の課題は機動性と見受けます。
 あれではヴェロキアの荒地を走破するにはちと辛いでしょう。
 主任にはその問題を打破する手段は見えてますか?」

 対弾甲冑の感想を述べるオルデーゼに対して、開発主任はなんと大笑をもって返答した。

「はっはっは! ややや、大佐。
 そりゃ無理ってもんです。
 なんせ体中に水袋をつけて動き回るようなもんですからなぁ。
 荒地どころか平地だって歩くには困難を極めますよ」
「な………!!」
「あいつは耐衝撃性には優れていますが、取り扱いが面倒なんですよ。
 今のところ、通常の甲冑の素材、形状を進化させる方向で現在研究が進んでいます」
「で、では……、今日のテストは……」
「ややや、あれもれっきとした研究の成果ですよ?
 採用されるかどうかは別としてですがね?
 やや、おかげさまで研究員の士気が大層あがりました。
 それも姫様の素晴らしいおから…や、ご人徳の賜物ですよ」

 一瞬あっけにとられたオルデーゼだったが、次の瞬間、兵器廠中に響き渡るような怒鳴り声をあげた。

「そんな言葉でごまかせるか!! バカモーーーン!!!」



 開発主任が研究室へ戻ってきたのは夜もずいぶん遅くなってからだった。

「ややややや、まったく……ずいぶんしぼられちゃいましたよ。
 すいません。コーヒー入れてもらいます?
 姫様ったら自分だけココアを飲みながら説教するんですよ。
 それがね、かーわいいんだ。怒っているくせにね、両手でこう…、包むようにカップを持っちゃってねぇ」

 助手たちが苦笑いをしながら主任に椅子を勧める。

「そりゃ絞られるでしょう。主任もずいぶんと無茶をします」
「まあ、しょうがないでしょう。
 今こいつを表に出したら、軍部は無理にでも実用化させようとするでしょうから。
 まだ、こいつに欠点がある以上、もうちょっと改良を加える時間を稼がなくっちゃいけません。
 人の命を預かる以上ね。
 あ、今日姫様が使われたやつのデータは取れてます?」

 そう言う主任が指でつついたシャーレの中にはゲル状の物体が入っていた。

「一応、軽量化、固体化はすでにできているんですけどねぇ……。
 いかんせん、ちょっとした水分の影響ですぐ液状に戻っちまう…。
 国防の要が『今日は雨の日だからお休みです』だなんて笑い話にもなりませんからねぇ」

 そう主任が呟くと、部屋中に笑い声が広がった。

「さ、今日も遅くなってすいませんがもうひとがんばりしてもらいますよ。
 あの愛らしくも凛々しい姫様が、首を伸ばしてお待ちなんです。

 いいですか、私たちが作る対弾甲冑は兵士を守ります。
 その兵士たちはあの姫様を守り、そしてその姫様はきっとこの国を守ってくれます。
 我々次第でこの国の行く末が決まってしまいますよ。
 みんな、自分の成す事はわかっていますね?」

 先ほどまでの頼りない笑い顔の主任はそこにはいなかった。
眼光するどく、部屋にいる部下たちを見回す。
その顔は、いっぱしの部隊長と言って差し支えのない威厳を漂わせていた。

「ええ、わかっています。
 私は、このゲルの更なる改良を」
「私は、化学を知らぬ兵士でも戦場で紛態からゲル状に調合できるよう、キット化を」
「僕は、甲冑の素材調合の試作を」
「俺は、もっとも衝撃を逃がすことのできる甲冑の形状の模索を」

 口々に答える研究者たちの顔もまた、歴戦の戦士の面構えだった。


 この日、ヴェロキア軍開発部日報にはこう記されている。

『オルデーゼ陸軍大佐、現場視察。 士気至ッテ高揚セリ』 と。

 この後、ヴェロキア王国は竜騎兵と共にその名を地上から消す運命にある。
その華々しくも悲しい伝説の裏には、このような英雄が居たことを誰も知らない。













「ああっ! このデータは一度姫様のお体を通過している!!」



 いや、やっぱりただの変態かもしれない………。





ヴェロキア竜騎兵外伝 ~竜騎兵を作った男たち~ 了



                                                   

あとがき

 ここのところオリスクを粗製乱造していたので、自分の文章の再確認とリハビリを兼ねて書いてみました。
地の文章を書くの久しぶりですよ。
オリスクだとキャラの表情や効果音、果ては擬音で表現できるから楽々できますね。
頼り切らないように気をつけます。

 以前から思っているのですが、ここのところのヴェロキアはシリアスな展開で滅びの美しさがあるのですが、それも栄えているところを書いてこそ。
その点、前半部の盛り上がりが物足りなかったので自分で書いてしまいました。
特に、マッコイに感情移入できれば、後半彼がいないことに対するオルデーゼの寂しさや虚無感がもっと出てくると思うのです。
 マッコイにはもうちょっとがんばって欲しかった。

 オリキャラ開発主任。
お話の都合上、彼を出さずにはいられなかったのですが、自分で思っていたよりもしゃしゃりでてくれました。
いい意味でも悪い意味でも。
私自身はオリキャラを二次創作に出すのはあまり好きではないんですが。
与えられた材料で工面できれば一番いいんですが。

 開発部研究員のみなさん。
イメージは『ニニンがシノブ伝』の忍者達。

        
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もっと動いて欲しかったのですが、思ったより早くオルデーゼ姫が切れてしまいました。

 それにしてもヴェロキアの更新頻度はもう少しなんとかならんもんか。
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